一宮市・來薫院 木造聖観音菩薩坐像
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種別 | Sculptures |
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詳細
一宮市大和町にある臨済宗妙心寺派の寺院、來薫院(らいくんいん)は、妙興寺住持であった古伯眞稽(こはくしんけい・生年未詳〜1461)を開基とする妙興寺の塔頭(たっちゅう)寺院の一つである。来薫院の本尊は平安時代後期(11世紀)に制作された聖観音菩薩坐像である、一木造の像で、高さは30㎝。髻を結い、天冠台をあらわし、額に白毫相、首に三道相があらわされている。上半身に条帛と天衣、下半身に裙と腰布を着けており、右手は手のひらを手前に向け、親指と人差し指を合わせる仕草、左手は手を握り人差し指と小指を立てて、未敷蓮華を持つ姿で結跏趺坐している。現在の台座と光背は、江戸時代につくられたもので、台座には仏師の名前、光背に取り付けられている鏡には「藤原作」の文字が残されている。髻を結い上げた部分や両足部分、肩から先はみな後の時代に作り直された部分の為、現在の姿は制作当初の姿とは変わっている可能性がある(※現在の両手の肘先、脚部、髻頂部は保存修理で修復されたもので、この修復前の部材も残されている)。小さな像だが、体や衣文のなだらかな起伏や頭髪の造形、天冠台の意匠など、平安時代後期に活躍した大仏師・定朝の作風を取り入れた、穏やかな雰囲気をあらわす菩薩像である。この観音像は、当初からこの地域に伝わるものなのかどうかはわかっていないが、妙興寺の塔頭・來薫院で大切に守り伝えられている。
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